パレスチナ新版 (岩波新書)


パレスチナ新版 (岩波新書)

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パレスチナ新版 (岩波新書)

パレスチナ新版 (岩波新書)
広河 隆一
岩波書店
発売日: 2002-05
価格: ¥ 819 (税込)
発送: 通常24時間以内に発送


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カスタマレビュー

4 現地を知る人間の貴重な論説 ( 2007-11-09 )
イラク戦争の陰に隠れてあまり報道されなくなってしまったパレスチナ問題。
イスラエルとパレスチナの対立はすでに報道の価値もないほどに日常化してしまった。

著者はイスラエル・パレスチナ双方に人脈もあり、訪問経験も豊富なジャーナリストである。
現地の事情も知らず、報道を読み解いただけの文章にはない力強さがある。
聖書時代の歴史から紐解き、第2次大戦、イスラエル建国、中東戦争、インティファーダの時代と丁寧にその紛争の過程を追っていく。イスラエル・パレスチナ紛争の理解には統治の歴史への理解が不可欠であるが、著者は十分に背景を理解し、イスラエル・パレスチナ双方の主張に耳を傾ける態度を持っているのは好感が持てる。

また、イスラエル・パレスチナの政治についても深い造詣を有している。
それは現場を見てきた人間にしか持ち得ない生々しさを持って迫ってくる。
著者は基本的にはパレスチナに理解を有することは本文からも明白である。だからといってイスラエルを全面否定しない。イスラエルの主張にも首肯すべき点はあるし、すでに建国して50年以上たったイスラエルを今更否定しても問題解決になんらの意義も有しない。

これからどのように共存を図っていくか。
その答えはますます見えなくなってきている

5 パレスチナ問題において「中立」という態度はありえるか? ( 2006-10-01 )
本書について、パレスチナの側に偏りすぎている、もっと中立であるべきだとの批判がよく聞かれる。そのようにいう人々は、「中立」という態度が、いかなる見えない非対称な権力構造の上に依拠しているかを考えてみるべきではないだろうか。

ハマス等による自爆テロを目の当たりにすると、決まってメディアや各国の政治家はこう言ってきた。「市民を標的とした卑劣な暴力は許されない。」と。確かにそのとおりであるが、しかし彼らは、パレスチナ人が歴史的に置かれてきた絶望的な状況を見ていない。パレスチナの人々は圧倒的な構造的暴力に(直接的な暴力にも)晒されてきた。彼らは、(第一次中東戦争時の難民の場合だと)60年近くも難民キャンプでの暮らしを余儀なくされている。その間劣悪な環境のキャンプで生まれ育った第二・第三世代が自らの境遇に思いを馳せ、欧米のダブルスタンダードの歴史を知ったとき、何を思い、考えるであろうか。ハマスらによるテロは、そのような構造的暴力を打破する抵抗運動に他ならないのである。欧米は、パレスチナ人を抑圧する構造的暴力には目をつぶりながら、ハマスによるテロを糾弾している。そのことが、パレスチナ人の絶望をさらに助長し、イスラム原理主義への回帰を強めさせ、テロに走らせているのではないか。

和解への鍵は、パレスチナ人の置かれている構造的暴力の状況を解くことにある。イスラエルはガザ・西岸占領地より撤退しなければならない。そしてパレスチナ独立国家が認められなければならない。また全てのパレスチナ人には、故郷への帰還権が認められなければならない。とにかくパレスチナ人の絶望を解消すること。構造的暴力という問題の本質から目をそらさないこと。ムスリムが虐殺され続けるという状況を解消するために国際社会が一致して取り組むこと。月並みな結論であると同時に、極めて困難なプロセスだと思うが、それこそが和解への唯一の鍵であろう。

4 パレスチナ問題を深く知るための良き入門書 ( 2005-12-18 )
 著者は、パレスチナとは地域を指しパレスチナ人とはそこに住む人を指しており、彼らは歴史上数多くの国家に属していたがそこに住んできたと指摘している。また、イスラエルは、歴史上キリスト教圏の国において数々の迫害を受け、近代ではナチスの迫害を受けたユダヤ人が、今度は迫害をする側に回りパレスチナ人を自分たちと同様な流浪の人々にすることで人類の希望を奪う結果をもたらす役割を担った国家として記録されるかもしれない、と述べている。
 著者はこう言う。大国は自国の都合に合わせてこの問題を利用して来た、歴史上発生した悲劇は現代でも同様に発生していることを理解すべきである、と。

1 熱い本であることは認めるが。。。。 ( 2005-11-25 )
著者が若き日からライフワークとして関わってきたパレスチナについてまとめたもの。パレスチナの惨状の歴史と著者の歩みがクロスオーバーしながら書かれている。
著者のパッションがダイレクトに伝わってくる熱い本で、とくにサブラ・シャティーラについてかかれた部分は、読む者に新書とは思えない感動を与える。多くの読者に読まれているのはこの感動があるからだろう。熱い名著だと思う。

ただしこの本の問題は、パレスチナ、アラブに肩入れしすぎていること。イスラエルの悪事はかならず誇張して書かれ、逆にアラブ側、パレスチナ側からしかけられた戦闘については、「怒りが爆発」と理解を示したり、「当然の反応」「自衛行為」などと著者の弁護がつく。多少なりとも現実を知っている人が読めば、著者の不公平な視点には愕然とする。
事実関連にしてもハザール帝国説という「トンデモ」を事実かのように書いていたり、パレスチナ難民には同情しながらも、アラブ諸国からのユダヤ難民の発生については「イスラエル秘密機関の謀略」など、はっきり間違っていたり、陰謀論になっている部分が多い。

全体としてあまりにパレスチナに都合が良い内容となっている。
現実の歴史や現状と懸け離れており、これだけを読むと「パレスチナ問題は何もかもがイスラエルが悪い」という感想しか起きない。熱さは買うが、あまり信頼しないほうがいい。

「著者の熱が伝わってくる名著」というよりは「著者の妄執が感染する熱い名アジ文」というべきか?。読み終わったら誰でも、竹槍でもかついでイスラエルへテロしに行きたくなるだろう。まさかそれが著者の狙いなのか?

この本が多くの人に読まれたことが、日本人の中東問題への誤解と偏見の根源のひとつとなってしまったと思う。 

5 虐殺史の中のパレスチナ ( 2005-11-17 )
 「虐殺」という事態を、私たち今日の日本人は、幸いにして体験することはない。だが本書を読むと、パレスチナではこれまでに幾度も虐殺が行われて来たことが分かる。ある意味で、戦後パレスチナの歴史は「虐殺の歴史」とも言えるほどだ。48年ヤーシーン村での虐殺(後の首相ベギンが関わった)、56年カセム村での虐殺。なかでも82年レバノン戦争下、後の首相シャロンが関わったサブラ・シャティーラ難民キャンプでの虐殺は凄惨を極める。そして02年ジェニンの難民キャンプでの虐殺がつづく。
 それにしても、これほどまでの憎悪をむき出しにさせる「民族」とは一体何なのか? 差別・虐待を受けた者は、他人の痛みが分かるというよりも、その怨念(ルサンチマン)のはけ口を弱者に向ける。かつてヨーロッパのキリスト教社会で差別されたユダヤ人は、いま自分たちを守るためにどんな卑劣な手段も辞さない。ナチスのホロコーストにも優るとも劣らない手段で、かれらはパレスチナ人をゲットーに押し込め、差別と虐待を続けている。
 本書の内容には、長年パレスチナに関わってきた人ならではのリアリティと迫力がある。その筆者が最初に体験したのが、戦後イスラエルの理想主義的な社会主義共同体「キブツ」の研修旅行であった、というのは面白い。「他人の不幸の上に、自分の幸福を築くことはできない」というが、イスラエルでは正反対に、他人の不幸の上に、自分たちの幸福が築かれている。その意味で、「キブツ」はイスラエルを象徴している、ということができる。

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