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カスタマレビュー
ハンニバルの栄光と滅亡の美しさ ( 2008-08-28 )
本書が 日本でのハンニバル研究書の嚆矢とのことだ。
ハンニバルは塩野七生の「ローマ人の物語」で読んで興味を持ち 本書を手に取る機会を得た。他のレビュアーの方も 塩野の本と本書を比較して 面白さで塩野に軍配を上げているが「物語の面白さ」という点では僕も同意する。
但し 塩野の著作は あくまで小説であるのに対し 本書は研究書であることを考えると そういう比較はしてはいけないのかとも思う。ましてや 著者の塩野は ハンニバルには相当感情移入しており ある意味で 彼女のラブレターのような様相も示している。但し 知的なラブレターとは読んでいて面白いことも確かだ。
そんな塩野さえ脇におけば 本書は研究書にしては 面白いことが浮かび上がってくる。こういう著者を 極東で持ったことは ハンニバルの幸せである。
それにしてもハンニバルの栄光と滅亡は実に絵になる。平家物語ではないが 日本人は滅びていくものに対する視線に 若干暖かいものがあるような気もしている。そう考えると このハンニバルは もっと人気が出ても良いような気もするのだ。
勉強にはなったけれど ( 2006-06-29 )
塩野七生さんの『ローマ人の物語』でハンニバルを知り、
もっと知りたくなって本書を購入。
確かに勉強にはなったけれど、
面白さ・読みやすさで『ローマ人〜』に劣る。
日本語で書かれた初めてのハンニバル本ということで
資料としての価値はあると思います。
ハンニバル研究の歴史にも触れられていて
一読の価値はあるとお勧めできます。
ハンニバルは最初の地中海の"世界人" ( 2005-08-24 )
ザマの戦いでスキピオ・アフリカヌスに敗れ、いったんは祖国カルタゴの再建につくすが(カルタゴが敗軍の将であるハンニバルをそのまま使いつづけ、しかも、ハンニバルが行政府の長としても有能だった)、やがてローマから「追放せよ」という命令が下り、セレウコス朝のアンティオコス3世を頼る、という流れの中で、他の地中海世界の国々に対して反ローマ同盟を呼びかけるという発想は、地中海が世界全体だと思われていた当時においては、まさに世界大戦を構想したのではないか、と。長谷川さんも書いているが、ハンニバルのこの構想がローマに地中海世界全体をとらえるという新しい世界観を与えたのではないか、と。
こうした新しい世界観はなにもローマだけにもたらされたものではなく、中東にも影響をあたえたのではないかと思う。たとえば、ハンニバルが頼って、後にローマと戦って敗れるアンティオコス3世の子として生まれたアンティオコス4世はエジプトのプトレマイオス朝との戦いに勝利を収め、中東からエジプトまでを支配する寸前までいく。そして、このグローバリズムの流れはユダヤの地において、ナショナリズム的な反乱(マカバイ戦争)を招く結果となり、ハスモン朝が成立する。そしてナザレのイエスが誕生したのはハスモン朝がアンティゴノスによって終焉を迎えた直後のことだった。ローカル宗教だったユダヤ教が、世界宗教となっていくキリスト教を生み出すためには、ハンニバルに端を発する前3-2世紀のグローバリズムが必要だったのかな。
