楼蘭王国―ロプ・ノール湖畔の四千年 (中公新書)
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カスタマレビュー
楼蘭と呼ぶか、クロライナと呼ぶか ( 2006-08-14 )
楼蘭といえばシルクロード。
そんなすり込まれたイメージがある。
某放送局の「シルクロード」は中国との協力で制作していたし、そもそも楼蘭のあった地は現在は中国領、加えて言えば「楼蘭」という名称も漢字表記。こういったイメージは楼蘭を中国文明と深く繋げて考えさせてしまう。
しかし、これも有名な「楼蘭の美女」。
金髪のインド・ヨーロッパ系の女性であることは少しでもこういったことに興味がある人は知っているはず。
さらに木簡といえば漢文資料というイメージが強いが、実は西域からはスタイン始めカローシュティー資料も多数収集されている。
実は西域は中国文明の外の世界であったのであるが、世間では「シルクロード」のイメージが強く、実態はあまり知られていない。
さまよえる湖に関するプルジェヴァルスキーからヘディンまでの論争、ロプノール地域の多数の城塞・都市のいずれが王国の首都であるか、湖の移動と都市の移動、ミイラの様式と民族など古典的命題から新しい課題まで楼蘭に関する重要な論点を丁寧にわかりやすく著述している。
また、ガンダーラ語文書の解読もこの手の新書ではあまり見ないもので、西域でどのような文化が栄えていたかを考えるうえで非常に参考になるものである。
西域は我々のイメージの通り、文明と民族の十字路である。
これまでは西域については学問的水準の問題もあってだが、中国文明からの視点で紹介されることが多かった。しかし、西域は、中国文明はその有力勢力であるとはいえ、土着・外来を含め多くの文明と民族交わる地であった。イスラム・トルコ・中国といった現在の西域に色濃く根付く勢力の到来以前の土着の文化や民族を探るこの書の試みによって西域の多様性がさらに鮮やかに蘇ることになるだろう。
探検のロマンからロマンの学術研究へ ( 2005-11-30 )
西域・シルクロード・さまよえる湖(ロプ・ノール)・楼蘭。これらの言葉は、私達の心に深く刷り込まれています。ヘディンやスタインの探検記は、年若い書斎探検家の夢の源泉でした。また近年、砂中で見出されるミイラ「楼蘭の美女」のテレビ映像は、大人になった今でも茶の間で懐かしい夢を見続けさせてくれます。
しかしロマンある地理学的な探検時代は過ぎ、今は考古学的な歴史研究の時代。その研究材料は、次々に見出されるミイラと木簡。その木簡は漢字だけではなく、古いインドの言葉であるガンダーラ語でも書かれています。著者は専門はインド哲学ですが、このカローシュテイー文字で書かれているガンダーラ文書を解読できるので、楼蘭史の研究を10年程しているのだそうです。
先行の研究の紹介が丁寧にされています。楼蘭周辺の発掘史が判りやすく書かれています。発掘された遺跡の都市名特定、ロプ・ノールの位置など、ヘディンとスタインの論争になった問題点が、良く調べられており、はっきりします。また中国の史書と発掘木簡を使って、資料に出てくる限りの楼蘭の歴史が、簡潔にまとめられています。
現代の研究成果として、ミイラの木棺や副葬品などによる正確な年代測定。ミイラの人種の特定問題。発掘された櫛形木簡や羊皮紙に書かれている下行文書から推測できる楼蘭王国の実像が、興味深く紹介されています。
楼蘭の王都が何処にあったのか?最後に著者の若々しい追求心が感じられる問題が取り上げられています。著者の探索の思考過程を追っているうちに、我々も少年に帰り、西域の砂漠世界に引きずり込まれるようです。
