ヴァンダル興亡史―地中海制覇の夢 (中公文庫BIBLIO)


ヴァンダル興亡史―地中海制覇の夢 (中公文庫BIBLIO)

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ヴァンダル興亡史―地中海制覇の夢 (中公文庫BIBLIO)

ヴァンダル興亡史―地中海制覇の夢 (中公文庫BIBLIO)
松谷 健二
中央公論新社
発売日: 2007-03
価格: ¥ 980 (税込)
発送: 通常24時間以内に発送


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カスタマレビュー

5 あるゲルマン民族の物語・その2 ( 2007-12-24 )
本書は、優れたリーダーであるゲイゼリックの指揮の下、ゲルマン民族大移動の時代にジブラルタル海峡を越えて北アフリカに進出し、強力な海軍を創設して地中海で活躍し、遂にはローマ皇帝から主権国家の地位を獲得するに至ったものの、ゲイゼリックの死後5代60年足らずで滅亡したヴァンダル族をその流浪の開始(紀元前2世紀)から鮮やかに描ききった快作。以前、同じ著者の「東ゴート興亡史」を紹介したことがあるが、それを読んで満足した人なら本作にも満足できるだろう。本書で東ゴート族との対比、特にどちらもカリスマ的な指導者であるゲイゼリックと東ゴーとのテオドリックとを対比して論じた章は秀逸である。また、著者はヴァンダル族が運命を賭けて渡ったジブラルタル海峡を訪れ、本書冒頭でそこの厳しい自然を描写し、悠久の歴史に思いをはせるが、風と潮騒の音とヴァンダル族の歓声が聞こえてくるような、短いけれども素晴らしい紀行文になっている。

ヴァンダル族に征服された北アフリカのカトリック僧侶の文書が多く残り、しかもローマ掠奪を行ったものだから、後世に「ヴァンダリズム」なる言葉ができ、悪者のイメージが強いヴァンダル族。たしかに掠奪や海賊等の行為はあったものの、あの時代多かれ少なかれどのゲルマン民族も行っていたもの。それより、ヴァンダル族を主体にして、8万人の集団が生き残りをかけてどのように闘い、北アフリカを支配し、東西ローマ帝国および東ゴート王国と丁々発止の駆け引きを行い、最後はゲリメル王が「空の空なるかな、すべて空なり」というこの世の無常を感じさせる言葉を残して滅びるまでの歴史を叙述する視点は実に魅力的。塩野七生氏のローマ人の物語第15巻の副読本にとどまらない充実した本として大いに推薦します。

5 アフリカに渡ったゲルマン部族 ( 2007-11-03 )
世界史の勉強でゲルマン人大移動に時間をかけるフツーの高校生はまずいない。西ローマ帝国が滅んだ後に一区切り感があり、部族名と矢印が交錯するヨーロッパ地図は見なかったことにしてしまう。意識は次に来るイスラム史だか中国史だかに移っている。再びヨーロッパに戻ると、カール・マルテルがツールポワチエの戦でイスラム軍の侵入を打破したりなんかしている。「フランク族、メロビング朝、カール・マルテル、ツールポワチエの戦い、732年」ととにかく覚える。「フランク族」がゲルマン人の大移動一波だったという認識はこの時点では結構薄い。尤もこれは二流私大志望の高校生の受験勉強の姿で、一流大学の皆さんに関しては分からない。要は、フツーの日本人にとっては、「ゲルマン人の大移動」はほぼ知識の空白地帯だということ。ちなみにヴァンダル族というのがいて、北アフリカで王国を築いたことは記憶の端っこにはあった。「ゲルマン人がアフリカに?」と想像して異様な感じを持っていた。
本書は『東ゴート興亡史』の続編として書かれたもの。地中海に旭日の如く勃興し、あれよあれよと滅びたゲルマンの一部族だ。涙を誘った東ゴート族の終焉と比べて、パーソナリティ的にはゲイゼリック唯一人、滅びもアッサリとしているが、それもまた歴史の多彩を物語って興趣が増す。
相変わらず著者が惚れ惚れするような歴史語りのお手並みを披露してくれる。馴染みの薄い歴史を、大量の部族と大量の妙な人名と絶え間ない人馬の往来を、一気読みさせてくれる稀有の語り部だ。塩野七生女史だってこうは行かない。局所と大局のバランスが良く、やわらかい口調で情と理を兼ね備えた洞察が差し込まれる。全編から伝わるのは生き残りをかけた人間のアニマルスピリットだろうか。闘争の中で獣性を燃やし尽くした後にゲリメルが呟く「空の空なるかな、すべて空なり」という言葉の真実が切ない。

5 歴史の中に消えていった民族の興亡史 ( 2007-06-04 )
 スペインの南端、アンダルシアのタリファに立つ松谷氏は、かつて1500余年昔、
AD429年の春にここに立ち、アフリカをにらんだ40がらみの男がいた、と書き始め
ます。それがヴァンダル族とアラニ族の王、ゲイゼリックでした。背後には8万の人々。
おそらく戦闘員は2万かそこら。
 ヴァンダル族の成り立ちと、その終焉の時、AD534年、そして最後の王ゲリメル
が流謫の地で死んだAD553年まで、松谷氏のペンは、てきぱきと、きびきびと、
ウエットではないが無味乾燥した文体でもなく、この歴史に消えた民族を描きます。
 スウェーデンの南部あたりに発したこの種族は、バルト海を渡ってポーランド北端
に一度は定住したあと、オーデル川を遡ったあたりでゲルマン人の大移動に巻き込
まれます。そのまま西進し、ドイツ、フランス、スペインと追われ、ついにヘラクレスの柱
を横断してアフリカに達したのです。終焉の地となったのはカルタゴですが、そこを
拠点としてシチリア島を傘下におさめ、一度はローマを略奪してのけました。
 東ローマ皇帝にユスティニアヌスという傑物がおらず、ベリサリウスという希代の名将
がいなければ、あるいは生き延びたかも知れない。
 さらに、ゴート族と同じに、もしも運と人材と政治力があれば、近代ヨーロッパの
源流となったのはフランク族ではなくヴァンダル族であったかもしれない。
 歴史とは時に無惨なもの。

 時には、こんな歴史も振り返ってみたいものです。

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