「絵になる」まちをつくる―イタリアに学ぶ都市再生 (生活人新書)
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カスタマレビュー
予想外の収穫 ( 2007-08-08 )
あまり期待せずに読み始めたが、これは予想外の拾い物だった。著者は早稲田大の建築学科を出た後、建設コンサルタント会社に入って活動している人物。そのキャリアの途中、イタリアで美術修復を5年間学んだという経歴の持ち主である。そのキャリアから著者はイタリアの都市の現在の姿が「過去のものをそのまま保存した」のではなく、「過去と現在を重層的に積み重ねながら修復され続けている」ものであることを知り、このような「都市の重層的な修復」というコンセプトを日本の都市に応用出来ないかと考える。本書はその思索の中間報告というところか。
まず評価出来るのは、イタリアの都市が視覚面で過去から現在へという歴史の流れに逆らわないようになっているという指摘。身体感覚と意味のアナロジーが人間の世界認識の基礎になっているというのはレイコフ&ジョンソンの有名な指摘であるが、著者は知ってか知らずか都市論の分野でその考え方を見事に応用している。またヨーロッパと日本では文化財に対する思想そのものが違うことを踏まえ、イタリアで用いられている修復論をそのまま日本に持ち込むのではなく、日本独自の修復論を構築すべきと指摘していること、その方向性もある程度指摘したことも高く評価出来る。
前半は若干流れが中だるみするが、後半部分はスリリングな展開で非常に面白く読めた。色々な哲学者の思想の引用が少々直接的過ぎる感もあるが、著者が研究者でないことを割り引けば減点材料とはし難い。具体的なケーススタディが無いことをもって批判する意見もあるが、本書はより根源的な問題に的を絞って論じているのであり、新書というボリュームではそれが正解であろう。
イタリアに学ぶ都市再生 ( 2006-02-12 )
100年後の日本の人口減少を現在のイタリアに置き換えて考えていく思考に独自性を感じた。
今後の日本の都市つくり(まちつくり)をイタリアに学ぶ「保存・修復」の考え方から、環境保全型社会の実現を目指す姿勢の重要性を考えさせられる作品でした。
題名がまちがっています ( 2006-01-04 )
歴史的な建造物の保存と観光産業についてなら内容はあってますが、一般的な都市再生の話はな〜んにもしてませんというよりわざと避けてるふしが見えます。歴史的建造物保存について基本的なことが知りたい人にはお勧めですが、都市再生の話を読みたいと思って買ったら、後悔しますよ。著者と読者の幸せのためにぜひ改名をお願いしたいです。題名を変えたなら、星3つは差し上げますよ。
前半は星5つ ( 2005-11-24 )
日伊の都市景観の違いは、歴史と木と石の文化の違いに起因するのだろうとばかり思い込んでいたのが、実はまちづくりの思想による違いだったのだということがわかって驚きです。没個性的な日本の都市もイタリアのように方向転換すれば、再生は可能だということでしょうか。個人的に、この5月に、ローマを一人旅してきたことを思い出しながら、深くうなずきながら読みました。修復の発想から街づくりを考察するのも新鮮でした。ただ、前半の説得力のある流れに比べて、後半の学説の引用や最後の「東京が「森」に還る」は飛躍しすぎているような気がします。前半だけで十分すばらしい1冊の本だったと思います。
思わず引き込まれます。 ( 2005-11-04 )
イタリア、そして、都市に対する今までの常識を覆してくれる本。
イタリアって、ファッションやアート・デザイン、オペラ、料理、サッカーだけではなかったんですね。
イタリア人が、都市を守り、風景を育てる努力を重ねていること、それも哲学思想にまで踏み込んで取り組んでいることが、美しい写真や分かりやすい図解で説明されています。(新書でこれだけ多くの図解が入っているのは見たことがありません)
日本のまちがなぜ「シャッター通り」だらけになって衰退し、イタリアのまちが観光客で賑わっているのか、その理由が「修復型まちづくり」にあると著者は強調します。「修復」を現地で手がけた実体験にもとづいた展開は、とても説得力があります。(しかも日本では都市計画を仕事にしているとか...)
「都市再生と都心部活性化のしくみ」は、専門外の私にも、日本の「規制緩和型まちづくり」の欠点が何なのかを、分からせてくれます。
「修復」については、映画『冷静と情熱のあいだ』のエピソードを紹介しながら、「レストラン」と「レスタウロ」が同源の言葉で、どちらも「癒し」を意味に含んでいる、という説明に惹かれました。
「あとがき」にもありますが、この本は、イタリア文化論、都市論、哲学論、日本文化論と、多くの顔を持っています。一冊の新書に盛り込むのは無謀という感じがしますが、全体を「修復」という話題でつないでいるおかげで、本全体に統一感が生まれています。
「帯」に「そして、東京は森に還る。」とありますが、それと本文前段の「イタリア都市」や「修復事情」の話と「何の関係があるの?」という疑問が、最終章のラスト4頁で解消します。そして、序章の「100年後人口半減」のショッキングな導入が、ちゃんとラストでつながっていることに感心しました。
そんなストーリーの展開が、読書にスリルをもたらし、一般教養書のレベルを超えた「新鮮な印象」を残してくれました。
