揺れるユダヤ人国家―ポスト・シオニズム (文春新書)
この商品を買った人はこんな商品も買っています
パレスチナ新版 (岩波新書)
アラブとイスラエル―パレスチナ問題の構図 (講談社現代新書)
イスラエルとパレスチナ―和平への接点をさぐる (中公新書)
アメリカとパレスチナ問題―アフガニスタンの影で (角川oneテーマ21)
エルサレム (新潮選書)
カスタマレビュー
イスラエルの現実を知る ( 2007-04-20 )
イスラエルのユダヤ人と聞くと、一神教たるユダヤ教を深く信仰し、「約束の地、パレスチナ」をめぐっては、パレスチナ人と激しく対立を続ける、一致団結した人々といったイメージがあるのではないでしょうか。しかし、実際のイスラエルは多様化が進み、むしろ分断されて混迷を深めていると言っても良い状態です。
分断の第一は、宗教的/世俗的の対立です。宗教への回帰(原理主義的とも言える)現象が現れる一方、世俗化、脱宗教化が進んでもいます。第二は、スファラディー・ミズラヒ(アジア・アフリカ系)とアシュケナジー(ヨーロッパ系)のエスニックな対立です。第三は、中東和平をめぐるイデオロギー的な対立です。占領地の返還に反対する大イスラエル主義と、占領地を返還して和平を達成を支持するグループに分かれています。
また、ユダヤ系アメリカ人は、イスラエルの強力な支持母体ではありますが、イスラエルのユダヤ人との間には微妙なギャップが存在します(「ガラス越しのキス」)。アメリカのユダヤ人の方がよりイスラエルを無批判に支持する傾向があり(遠隔地ナショナリズム)、対パレスチナではより強硬な態度が支持されるます。しかし、現実的な対応を迫られ、和平に向けて多様な意見を戦わせているスラエルのユダヤ人にとって、アメリカのユダヤ支持は歓迎すべきことばかりではありません。アメリカのユダヤ人のフィルターを通して見ることの多い日本人としては、この点は、大いに注意べき事だと思います。
このように、決して一枚岩ではない現実のイスラエルのユダヤ人の姿を丁寧に解説する本書は、荒唐無稽な「ユダヤ人陰謀説」も含めた日本人のユダヤ人観を正すものであり、今後の中東和平を考える上でも重要な視点を提供しているものと思います。
内憂外患-シオニズムの様々な内部問題を提示 ( 2005-01-30 )
イスラエルは宗教国家ではなく、ヘブライ語とアラビア語を公用語とし、信教の自由を認める世俗国家である。パレスチナに西欧ユダヤ人のための新国家を造ろうとしたシオニズムは一種のナショナリズム、パレスチナ人にとっては「帝国主義」であった。本書はイスラエルの抱える諸問題は、周囲をアラブ諸国に囲まれる地理的事実ばかりではなく、この国の内部、そしてシオニズムというイデオロギーの内包する矛盾にもあることを指摘した好著である。西欧ユダヤ人が主導するこの国は、徐々に近隣のイスラム諸国から移民してきたアラビア語を話すユダヤ人口の増大で「中東化」し、ロシア系の発言力も増している。宗教としてのユダヤ教に依存せざるを得ないナショナリズムとしてのシオニズムの限界を提示している。
無比の日本人論者 ( 2002-07-28 )
イスラエルでの滞在経験を持ち、日頃から現地の英字HPを読む者の目からみて、立山良司氏は現代日本人の中で唯一、教示あるイスラエル・パレスチナ論者だ。この作者には他に、「エルサレム」「イスラエルとパレスチナ」といった良書もある。中東問題の本質は「難民キャンプ」やテロの報道写真・ビデオ映像にあるのではない。人類が直面してきた最も困難な状況が、まさに「いまここにある危機」として現存している。そこに生きて向き合っている者たちがいる。誰一人、善悪論で類別・整理することのできない問題がある。立山氏は注意深く客観性を維持しながら詳細を記述しているが、想像力を働かせながら読む者ならば、人類の歴史的状況に震撼すら覚えるはずだ。
ユダヤ人国家を知る ( 2000-12-31 )
イスラエルはユダヤ人の国家であると言えるだろうか。宗教的にみれば大半の国民はユダヤ教徒であるが、100万以上のイスラム教徒や、ドルーズなどの他の宗教も混在している。ユダヤの中にもスハラディー、アシュケナージ、あるいはアジア系ユダヤであるミズラヒといわれる2000年に及ぶ流浪の民であった期間の過ごした文化によって、イスラエル人といっても様々な違いを持っている。
イスラエル人の構成は、あらゆる意味で実に多様だ。
そしてイスラエル人が2000年間追い求めて来た「自分達の国家」を持ってから約半世紀経った現在、世界はグローバル化が進み、国家とか国境という意味合いや枠組そのものが弱くなってしまっている。
このような背景の下で、「ユダヤ人国家」が、一体どのような方向に向かっていくのかは、実に興味深い問題である。
本書は中東問題の研究家である著者が、イスラエル及び、アメリカ等に在住する世界のユダヤ人にとって、「ユダヤ国家」イスラエルがどのような意味合いをもっているのか、あるいは彼等のアイデンティティにとって、「ユダヤ国家」の占める意義は一体何であるのか、イスラエルが現在直面する多様な問題の分析を通して分析したものだ。
神によって約束された土地に自分達の国家を作るというユダヤの人々が2000年追い求めて来たいわゆる「シオニズム」が、その夢が実現された現在、イスラエル国家の基盤としてどのような位置にあるかといった問題は、中々触れられることのない問題であり、その分析は面白い。
ユダヤ教の教義と、国家の法との相克,パレスチナ問題を含めてイスラエルの安全保障問題、あるいはホローコーストの記憶が、今イスラエルにとってどのような功罪をもたらしているかなど、我々日本人が、余り知り得ない話を、丁寧に解説している。
