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カスタマレビュー
「新しき村」の情熱と挫折 ( 2008-04-02 )
この本は「白樺派」の作家、特に武者小路実篤が創めた「新しき村」と、その村に好意的だが距離を置いた志賀直哉を中心に、大正時代の思想と精神を描いた本です。
「新しき村」が当初、予定していた「理想郷」にならなかったのは、簡単に言えば「理想」に耐えれるほど人間は「誠実」でも「寛容」でもないと言うことだと思います。
理想主義者が集まり村をつくっても、そこに「厳しい現実」がある限り現実に向き合はざるをえず、そうなれば不平不満や不協和音が生じ「脱落」したり「追放」される村民が出てくるのです。
武者小路は自分達を共産・社会主義者とはしていませんが「新しき村」の「問題」は共産・社会主義と共通の「問題」をはらんでいるのだと思います。「新しき村」が武者小路などの資金援助で成り立っていたと言うことも他国の援助で成り立いる共産・社会主義国と共通しています。
大正時代は共産・社会主義国がまだ崩壊しておらず、かなり楽観的な理想主義の時代だと言えますが、特に「新しき村」は理想主義を考える上で興味深い歴史資料だと思います。
秀作 ( 2008-01-25 )
関川夏央氏の著作を手にするのは本書が初めてであるが、本書は秀作と言える。大正期というしばしば閑却されがちな時代文脈の中で、武者小路実篤、志賀直哉らが生き生きと描かれている。関川氏の他の著作も一読の価値があるにちがいない。
断片的知識の有機的な結合 ( 2006-08-07 )
中学高校と、ほとんどの人が覚えさせられただろう日本の文学史。
私は史実の研究家ではないので、純粋に「当時を生きた人々」の生活模様や、思想がどのようなものであったかを知りたくて本書を読んだ。
出てくる名前は見覚えのあるものばかり。
これまで志賀や武者小路の作品名を知っていて、その作品を読んだものがあったとしても、小説一個の評価としてしか自分の中になかった。
それら作品が、どのような時代背景で書かれたのかがとてもよくわかる。
そして、その作品を書くことで、彼らがどのように生きようとしたのかも。
名前を記憶させられていた作家、作品。それらの知識に一本筋が通って有機的にむすばれていくのがよくわかる。
また個々の作品を読んで、再読したいと思った。
お目出度き人々の思想 ( 2006-03-13 )
およそ人の思想で時代の制約をうけないものがあろうか?いまや誰もかえりみない白樺派の人々の思想も、かっては時代の息吹を受け輝いたこともあったのだ。関川氏は、読んで心地よい例の文体で、「新しき村」とその周辺の人々を描き出してくれた。その筆は、ほんのわずかにせよ魯迅兄弟や毛沢東にまで及ぶ。「人民公社」が「新しき村」のエピゴーネンであったのかどうか、ぜひ一点突破全面展開をしていただきたいところである。毛沢東の出身校を「湖南第一師範」とするのは、「長沙第一師範」の誤りであろうが、本書の価値をいささかも貶めるものではない。日向の「新しき村」に最後まで残った者が誰であったか、実に意外な結果がしめされる。ぜひ自分で本書を紐解かれよ。
