北アフリカ・イスラーム主義運動の歴史
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マグリブのイスラム主義運動の挫折から、イスラム世界の行末を暗示する貴重な1冊 ( 2006-09-28 )
日本のイスラム書籍では、中東以外の地域の内容は極めて少ない。その意味で本書は北アフリカのマグリブ諸国を俯瞰できる貴重な1冊ですが、本書の試みは、単に地理レベルの研究に留まらず、マグリブのイスラム主義運動の研究を元に、イスラム世界の行末、市民社会実現の可能性まで考察した、極めて意欲的なものだと言えます。
イスラム主義組織の多くは、独裁政権へのほぼ唯一の反体制組織として胎動する傾向がありますが、それはマグリブも例外ではありません。ブルギバによる独裁体制下、国家の宗教への干渉や文化的・宗教的アイデンティティ問題が棚上げされたチュニジアでも、マフザン体制下、バイアによる絶対的権限を持つ国王が一切の政治責任を免れたモロッコでも、FLNの独裁体制下、特権カーストが生まれたアルジェリアでも、中東や中央アジアと同様、国内の様々な矛盾に対処できる唯一の組織として、イスラム主義運動が大きな期待と熱狂に包まれたことが、本書を通じて理解できます。
しかし本書の優れた点は、熱狂したイスラム主義運動の挫折要因を、運動内部の矛盾から考察している点です。チュニジアのMITやアルジェリアのFISは、宗教を排他的に支配し、都市中間層と貧困青年層の亀裂を深めた結果、モロッコのJAIやPJDは、民主主義否定や女性運動へのジハードを唱えた結果、国民からの支持喪失と運動内部の亀裂により、急速に衰退しました。本書を通じて、独裁体制の弾圧に関わらず、イスラム主義組織は、対立と分裂を民主的に解決する術を備えていないことが分かります。
自らの宗教観のみを絶対視し、対立や分裂の危険性を孕む体質は、中東等のイスラム主義組織にも該当します。マグリブ諸国の歴史は、イスラム世界全体の行末を暗示している訳ですが、本書はそうしたイスラム世界の現状と展望を見事に捉えています。
