チェチェンで何が起こっているのか


チェチェンで何が起こっているのか

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チェチェンで何が起こっているのか

チェチェンで何が起こっているのか
林 克明
高文研
発売日: 2004-03
価格: ¥ 1,890 (税込)
発送: 通常24時間以内に発送


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カスタマレビュー

5 誰が人権を踏みにじっているのか ( 2008-07-27 )
「旧制ロシア帝国の版図をそのまま引きつぎ、(中略)少数民族を抑圧し、『諸民族の友好』というスローガンを打ち出して民族問題を隠蔽した点で、ロシア帝国、ソ連を継承するロシア連邦は、一貫して帝国主義を国の根本に据えた国家といえる」。本書の衝撃的なこの一文が、チェチェン問題とロシアの現状を、もっとも端的に言い表しているのではないか。

「帝国主義」という言葉の定義については論議の余地があるかもしれないが、石油などの資源を狙いに、民族の抵抗を武力で制圧して領土とし、傀儡政権をうち立てる(なぜ現在のチェチェン政権が傀儡なのかは本書を参照)などして支配することがそれなら、ロシアの対チェチェン政策はまさに帝国主義であり、考えてみれば敗戦までの日本が満州でやった手口と寸分変わらないものだ。また、チェチェンの分離独立を認めれば他の地域も立ち上がるだろう、というプーチンの言葉は、ベトナム戦争に突き進んだころのアメリカの「ドミノ理論」とうり二つだ。

アメリカのイラク戦争も、対テロ戦争や独裁政権の打倒・民主化などの名目の陰に石油資源への思惑が言われているが、本書によれば、「国内の対テロ作戦」として隠蔽された「プーチンのカーテン」の中で軍の手によって行われている信じられないような犯罪行為は、スターリン時代の民族流刑に匹敵する犠牲を出す「チェチェン人抹殺」政策(本書)だという。アメリカの戦争、中国のチベット抑圧などが国際的に注目されているが、その陰に隠れ、100万人の誇り高き民族に対する国家の犯罪が行われているという事実を、本書は私たちの前に突きつけている。

4 悲劇の国−チェチェン ( 2007-01-10 )
 最近ではモスクワの劇場占拠事件で世界を震撼させたチェチェン武装勢力。ロシア当局は早々に「テロ」と断定し、アメリカのWTCビル爆破事件を引き合いにテロリズムに対する正義の戦いを演出した。チェチェン側からすればやむにやまれぬレジスタンスなのだろうが、その「テロ」ですら、チェチェン侵攻のための自作自演を疑う要素が色濃く残っている。
 国境をロシア軍に封鎖され、また情報統制によりロシア側に不利な情報は徹底的に排除されているため、チェチェンの現状を知ることは極めて困難である。そうした中、著者が文字通り決死の覚悟でチェチェンに潜入し、現地での取材をもとに出来あがったのが本書である。
 それだけに、その記述は生々しい。ナチスドイツと見まがうような現代ロシア軍の所業に、時空を経て繰り返される人間の愚行を嘆かずにはいられない。
 生死の狭間でなお民族としての自尊心を失わないチェチェン人。一方、自国の利益のために小国を弄ぶ大国。正義はどちらにあるのか。
 近年相次いで生じたロシア批判勢力の謎の死が答えを解く鍵になるのかもしれない。

4 「ハサビュルト和平合意」をチェチェン側が先に破ったという歴史的事実:チェチェン側によ ( 2004-10-27 )
著者はバサーエフ、マスハードフ大統領と直接インタビューしている。

 <今回の戦争のきっかけになったダゲスタン侵攻の真意は何か>
「ロシア軍がダゲスタンの三つの村を包囲して村民を虐殺し始めたのだ。
彼らを助けるために我々は駆けつけ、住民をロシア軍の包囲から脱出させる
ことができたのだ」(P.122)と、バサーエフは答えている。

 著者も「ロシア側の挑発だった可能性が高い」(P.26)と述べている。

 ロシア軍の行動が、もし仮に百歩譲って、『挑発』だったにせよ、ロシア
連邦ダゲスタン共和国にチェチェン側が先に軍隊を越境させたという事実は
何ら変わらない。

 第一次チェチェン戦争を終結させた96年8月の「ハサビュルト和平合意」を
チェチェン側が先に破ったという歴史的事実に何ら変わりはない。

 <チェチェンにはいくつもの武装勢力が存在し、マスハードフ大統領は
掌握していないとロシアは指摘しているが>
「確かに武装勢力は存在している。働き口のない人で、私が彼らを押さえ
込もうとしたらロシアは侵攻を早めただろう。私に従った勢力もそうで
なかった勢力も、今では『俺たちは大統領のもとでロシアと戦うつもりだ』
と言ってくれている」(P.127)とマスハードフ大統領は答えている。

「私が彼らを押さえ込もうとしたらロシアは侵攻を早めただろう」とはどう
いうことだろうか? 
「ハサビュルト和平合意」をチェチェン側が先に破ったことにどう対処する
つもりだったのだろうか?
 もしチェチェン民衆をロシアとの戦争に導きたくないと言うのなら、
軍事侵攻した者達を断固処罰するべきではなかったのか?
軍事侵攻を行った兵士達を武装解除し、拘束し、逮捕し、裁判にかけ、
処罰し、ロシアと国際社会に謝罪し、二度と起こさないようにする、
その実績を示す責任があったと思う。

5 ロシア学校占拠事件の背景がよくわかる ( 2004-09-11 )
ロシアで起きた「チェチェン武装勢力による」とされる学校占拠事件。膨大な幼い犠牲者を出したこの事件には解明されていない部分も多い。当局による人質数発表の嘘。事件への対応に関しプーチン政権を批判したため解任された新聞編集長。何者かによって毒殺されかけた記者。あまりに不明な部分が多く犯人像も特定しにくいが、犯人らが要求した「ロシア軍によるチェチェンへの攻撃の中止」とは何か――それは本書を読むと非常によくわかる。
エリツィン時代に始まったこの戦争で20万人ものチェチェン人が殺され、子供も数万人殺された。そしてナチを思わせるロシア軍による拷問。それが学校占拠事件と違って世界中で大きく報道されることなく、今この瞬間も人知れず続いているのだ。

だからと言って決してテロを肯定するつもりはない。
だが、そんな状態だからこそ、テロがますます増える結果になっているのだと思う。
僕たちはロシア政府の発表をただタレ流すだけの大マスコミに踊らされず、少しでも真実を知っていく必要がある。危険をかえりみず何度もチェチェンに足を運んで取材した著者による本書は、その大きな手助けになると思う。

5 チェチェン問題の入門書かつ一級の資料 ( 2004-05-09 )
 大国の侵略に対するイスラム系住民のレジスタンスという点では、「チェチェン戦争」も「イラク戦争」も同じはずだ。しかも、「テロリストの殲滅」を一つの口実とし、石油支配を経済的目的としている点でも、両者は共通している。「チェチェン戦争」は、ソ連邦解体直後から始まり、その後の約10年間で20万人の死者を記録した。これに比べて「イラク戦争」は、9.11テロ以降の米国による戦争政策によって開始され、約1700人の死者を記録している。しかしながら、「チェチェン戦争」については、国際社会の関心は未だ低いのではないだろうか。
 

 本書は、ジャーナリストによる現地レポートと、NGO活動家による情報解析から構成されている。そこでは、ロシア軍による残虐行為とチェチェン人の決死の闘いがリアルに暴き出され、その原因や背景が的確に分析されている。もし国際社会が当初からこの問題に正しく対処していたなら、現在の大国による戦争と無差別自爆テロの悪循環という状況は、無かったのかも知れない。言い換えれば、米国によるイラク占領支配の欺瞞性が明らかになりつつある今、冷戦終結直後から続く「チェチェン戦争」の現実に、世界は立ち返り注目すべきではないのか。同時代に生きる我々にとって、チェチェンが提起している諸問題は、決して避けて通ることが出来ないものばかりだからである。

 国際政治の専門家やロシア研究者、イスラムや民族問題に関心をもつ人、反戦運動の活動家や平和教育を担う教員などあらゆる人に、是非、一読することを勧めたい。

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